映画『パラドクス』のネタバレ感想です。
すごく不気味でめっちゃ怖い映画です。
前情報なしで観ると本当に衝撃的で気持ち悪くなるので、そうなっても構わない方はネタバレを読まずに鑑賞してください。
【↓ 以下は雑なネタバレと感想です】
この映画は一言で言えば、救われないループものです。本当に見ていてしんどくなるので注意。
現実と非現実が絶妙に交錯する奇妙な作品、というのが私の感想。本当によくこんな映画作ったよね(褒めてます)。
【↓予告編です】
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冒頭、エスカレーターに横たわる花嫁姿の老女から始まり、なんか嫌だな・・と思っていたら間髪入れずカップルのグロテスクなキスシーンが続く。
若い新婚カップルなのに、とんでもなく気持ち悪いキスかましてくるんですよ。
この不快感は、直前に映る花嫁姿の老女の異様さや、演出のギャップによるものでしょうか。
劇中では、二組のグループが35年ループの世界に閉じ込められる様を描いています。
35年ですよ!!?
しかも同じ場所で35年。ループものの中では過酷な部類ですよね。
時空がループしていることに気づいてからの、35年後のメンバーたちの荒み具合たるや。
シュッとしていた警官が、35年の時を経て完全にヨボヨボのおじいちゃんになってたり、かと思えば犯罪を犯した精神不安定な若者がめっちゃマッチョの中年になっていたりで、登場人物の認知が若干バグります。
しかもこの人たちは非常階段に閉じ込められるんだぜ・・・。
窓も何もない階段室に35年。気が遠くなるよね。
一方、ハイウェイに35年閉じ込められるのは、あるステップファミリーです。
同じ道路を車で走り続ける家族。母親が終始ヒステリックでしかもノーブラなので、見ているこっちが不安定になってくる。35年後に老婆と化した母親が老人と化したステップファーザーとカーセッ○スするシーンとか誰得やねん(しかも2回ある)。
劇中、ループへのヒントがいくつかあります。二度目の鑑賞で気づくものがあったりと、数回鑑賞することで見えてくる真実があるのです。
それぞれの登場人物が繰り返されるループの中で徐々に変化し、希望や絶望を抱えながら運命を受け入れていく様子は、哲学的なテーマも感じさせました。
タイトルにもある「パラドクス」とは、閉じ込められた世界や繰り返される運命を示しているんだってね。さらに絶望的なのは、35年ループは一度ではないこと。
一つ目のループを終えた次に、更なる35年ループが待ち構えているのです。
登場人物たちは成す術なく、ループの輪に入り、また新たなループの中に飲み込まれていきます。唯一ハムスターだけが自由を得られる。よかったね!
全体を通じて、人生の繰り返しや選択の重み、そしてそれを超える運命の力について考えさせられます。散々不気味とか気持ち悪いとか書きましたが、今年観た映画の中でオススメに入る一つです。【完】
備考:
劇中、若者の首に「late fate」と書かれた刺青が映るのですが、意味を調べてみたら「遅れてやってきた運命」とか、「思いがけず訪れた運命」を意味するんだってね。
運命が後から自分に影響を与える・・というニュアンスにも取れる。
「late(遅れた)」が、人生の中で何かを受け入れるまでの時間や葛藤を表している?
【▼ この哲学的なシナリオを映像化したのは本当にすごいと思う。一見の価値ありです。】
【▼ fate と言えばこの映画。(パラドクスとは関係ありません)】