2012年/ 日本(75分)
監督:さとう けいいち
原作:ジョージ秋山
出演者:アシュラ(野沢雅子)/ 法師(北大路欣也)/ 若狭(林原めぐみ)/ 七郎(平田広明)/ 地頭(玄田哲章)
【あらすじ】
洪水やかんばつが相次いだ1400年代の半ば。荒野と化した京都でケダモノのように育ったアシュラは、優しい少女・若狭(わかさ)や法師に出会い、言葉や笑うことを覚えていく。しかし天災が訪れ、人々は貧困によって追い詰められていき……。
(Yahoo!映画より一部抜粋)
【予告編】
飢餓、人肉、母にコロされかけた赤子と三大鬱ワードが盛り込まれているアニメ映画、「アシュラ」。なんとなく避けていましたが、観てびっくりの超名作でした。
以下雑にネタバレしてます。未鑑賞の方は先に映画を観てから読むことをおすすめするよ!
時は戦国の世。焼け野原と化した地上で、身重の女性がたった一人で出産する。生まれた赤子に乳を含ませ、ひとまず安堵するも、食べるものがない。
あたりにはし 体が転がっているばかり。身も心もボロボロで精神が追い詰められた母親はついに、我が子を燃えさかる炎で焼きコロ し、食べようとする・・。
時は過ぎ、8年後。業火の中生き延びた赤子は、獣のような野生児になって成長していた。
ディズニーの世界ならターザンになって森の動物たちと歌い踊っているだろうに、「アシュラ」の世界は弱肉強食。野生児は人をコロ し、その肉を喰い命を繋いでいる。
旅の坊さんに襲いかかり喰らいつこうとする野生児。しかし坊さん強し。軽くいなされ、食事を提供され、ちょっと説教されたのちアシュラと名付けられる。
▼アシュラの背後に見える阿修羅神。神と業を背負う象徴的なシーンです。
アシュラが坊さんに教えられて「なむあみだぶちゅ」とか言う可愛い。我が子が初めて「おむちゅ」って言った時とかぶる。
その後成り行きでアシュラは地頭の息子を噛みコロし、怒った地頭に追い詰められて谷底へ落ちます。しかし若いうららかな女性・若狭(わかさ)の介抱により回復する。
若狭が一緒に遊んだり言葉を教えてくれたよ!なんかママンみたい!
いつしかアシュラに人間の心が芽生え、若狭を母のように慕うようになります。
これ村人に見つかって地頭に報告されたら、若狭は徳川牛轢きの刑になるんじゃ・・と恐々として観てましたが、牛轢きの刑にはなりませんでした(安堵)。
土砂災害によって発生した飢餓で衰弱シしますが・・。
▼若狭によって一時の母のぬくもりを思い出すアシュラ。
暴徒と化した村人たちによる陵 辱シとか、七郎(若狭の恋人)との姦通罪による張りつけの刑などを想像していたので比較的ましな最期に思える不思議。
▼徳川牛轢きの刑を詳しくご覧になりたい方はどうぞ。
恋人・七郎との時間も大切にしたい若狭は、ストーカー化しつつあるアシュラを疎んじるようになる。そしてある雪の日、「若狭=母」を奪われるという怒りからか、アシュラは七郎を切りつけてしまう。
若狭は怒り、アシュラを「この人でなし!」と罵倒します。
一時は悲しみから若狭の元を去るアシュラ。しかし飢餓で骨と皮状態になった若狭を見て、アシュラは馬をシメて、その肉を若狭に与えようとする。
ただ生きてほしい一心で起こした行動なんですけど、若狭は「それは人 肉でしょう!」と言って地面に肉を叩き落とす。だから馬の肉だっつってんだろ!!喰えよ!
信じてもらえないアシュラは泣く泣く退散。そこへ来た地頭と村人たちに追い詰められ、つり橋から川底へ落とされてしまう。
ここのシーンが本当に、人間の心を持つことができたアシュラが人間によって業火渦巻く地獄に突き落とされるようで見ていて偲びない。
しかしアシュラはなおも生き延び、ワカサの躯(むくろ)の横で人知れず涙するのです。
▼8歳の子ども相手に全力で潰しにかかる大人たち。つり橋に火を放たれる。
最後は坊さんになって木彫りの仏を彫るアシュラでEND。
★いい映画だからこそ個人的にモヤる箇所ベスト4
1. 村が飢餓に陥った時、若狭が食べ物を人にねだってばかりで全然生産しようとしない。
恋人・七郎がやっと集めた芋を若狭に与えるが、「次っていつ(持ってくるの)よ?」と不満気。
2. アシュラが盗んできた馬肉を人 肉と決めつけ食べない若狭。馬肉やけどたとえ人 肉でも頑張って持ってきてくれたんやぞ食えやコラァァア!!(デジャヴ)
3. と言うかアシュラが人 肉食してたことは知らんはずやのになぜアシュラが持ってきた肉を人 肉と断定できるの若狭?
4.何気に冒頭でアシュラが村の一家を(食べ物を奪うため)皆ゴロしにしている。現代だったらアシュラ極刑確定だよね。
まあまあカオスな内容なんですけど、万人向けにすんごい上手にまとめて超感動作に仕上がってます。なんなら冒頭のアシュラを出産→授乳のシーンから泣ける。
あと、私はなぜかアシュラのことをずっと女の子だと思って観ていたんですけど男の子なんだね。なんか安心した。そしてアシュラの声優さんが野沢雅子さんなんですけど、どうしても悟空(もしくは悟飯、悟天)が「なんでこんなところに産んだんだぎゃあ!」って叫んでいるように聞こえてしまう。
▼海外でも高評価なのうなずける。75分と短いので観やすいです。
▼漫画原作版。未読ですが映画よりもうちょっとエグイらしいね。