2005年のホラー映画『輪廻』のネタバレ感想です。
未鑑賞の方は、ぜひ先に本作を観てからネタバレを読んでくださいね。
何故かずっと黒沢清監督のホラー映画だと思ってたんだよね。実際に特別キャストで出演しているし、なんか暗くて不気味な空気感が黒沢作品ぽいと思ってた。
違いました。清水崇監督作品です。
【↓ 予告編です。】
霊が大好きな人には嬉しい不気味な演出が目白押しであり、冒頭から霊が頻出します。具体的には、
ーエレベーターで霊と2人きりになる。
ー夜道を走るトラック運転手が怪しい男をはねたら霊だった。
ー公園で一瞬となりにいた人が霊。
特にこの、"一瞬となりにいた人が霊”がめっちゃホンモノっぽくて怖いです。
主人公の渚を演じた優香さんが恐ろしく小顔で、そちらに気を取られている間にも心霊現象が頻発します。
物語は、1970年に実際に起きたとされるホテルでの一家心中事件が基となっています。この事件では幼い兄と妹のほか、従業員や宿泊客を含む11人が犠牲となり、犯人である父親・大森も自サツ。
唯一、兄妹の母親だけが生き残り、幼い妹が大事にしていた人形を大切に保管しています。
椎名桔平さん演じる映画監督の松村は、この事件を題材に映画を撮ろうとしますが、主役に選ばれた渚は、次第に事件で亡くなった少女の霊を見るようになっていきます。
もしかしてこの少女の霊は生前の自分で、何かを訴えかけている・・?と訝しむ渚。
しかし物語の後半で、
渚は事件の犠牲者の生まれ変わりではなく、犯人である大森の生まれ変わりであったという衝撃の事実が明らかになります。
そして、かつての被害者たちが霊体となり再び集合。輪廻を経て渚に生まれ変わったサツ人犯・大森に復讐する形でクライマックスを迎えます。
しかし、よく考えると渚自身は特に悪いこともしていないので、霊たちに追い詰められ廃人化してしまうのが可哀想な気がしてくる。渚は大森の魂を受け継いでしまった、ある意味犠牲者ともいえる存在であり、どこか悲哀を感じさせる結末となっています。
ラストシーンで精神に異常を来たし、病院に収容される渚。事件のあと一人生き残った母親が、コロ された幼い兄妹の無念を晴らすように、妹が大事にしていた人形を渚の独房に置きます。それを見て恐怖する渚、ニヤリと笑う母親。
一瞬、渚の表情がふっと和らぐのですが、大森の人格が一瞬出てきて、幼い兄妹(自分が手をかけた子どもたち)との楽しかった日々を思い出しているんだとか。
廃墟化したホテル、不気味な音楽、カーテン越しの影など、ホラー映画ならではの雰囲気が画面に充満しており、昼間でも安心できない不気味さがあります。特に舞台のホテルなんですけど、綺麗な状態なのに「ここには泊まりたくない・・」と感じるんですよね。
何気に豪華なキャストもこの映画の見どころの一つ。香里奈さん、小栗旬さん、松本まりかさんなどが若き日に出演しており、さらに椎名桔平さんや杉本哲太さんも加わり、安定感のある演技が物語を支えています。
全体を通して、優香さんの演技が素晴らしく、特に終盤の”怖すぎておかしくなってしまう人”は一見の価値アリ。清水崇監督の手腕が光る一本だと思います。
【↓ 本当に狂気が宿っているような優香さんの表情に注目です。】
【↓観たことないけど大輪廻ってなんかすごい言葉。台湾映画らしい・・気になる。】