紗央里ちゃんの家/ 矢部崇氏著書
【あらすじ】
毎年いとこの紗央里ちゃん宅に滞在する”ぼく”と父、母、姉。でもその年はおかしなことばかりだった。例えば滞在中ずっと紗央里ちゃんが家にいないこと。家の中が異常に生臭いこと。そして紗央里ちゃんのおじさんとおばさんが何かを隠していることー。
第13回ホラー小説大賞長編賞作。
↓ここから「紗央里ちゃんの家」雑なネタバレと感想です。
全体的に血生臭い小説なんですけど、その原因を誰も解決しようとしないのでいつまでも血生臭さを垂れ流している感じの話です。
前提として紗央里ちゃんの家でサツ 人が行われます。
そして被害者の祖母は体をバラバラにされた挙句、家中のいろんなところに体の一部分を隠されます。
それが指だったり、足だったり、腸だったりするわけです。
主人公の少年(紗央里ちゃんのいとこ)は紗央里ちゃん不在の家に宿泊した際、そのバラバラシ体を少しづつ見つけるのですが、
「証拠を集めて警察に持って行こう!」
とかではなく、なんとなく見つけて手元に置いておくのです。
なので結局何も解決せずに終わる(笑)。
どうやら紗央里ちゃんの両親が犯人ぽいのですが、誰もそのことについて追求しない。主人公の少年に至っては紗央里ちゃんのお母さん(以下紗央里母)に包丁で攻撃されても警察に行かず普通に帰宅します。
しかもしょっぱなから紗央里母が全身血ぬれの状態で登場します。
完全にこの人が犯人なんですけど、誰も「何も特別なことは起こっていないふり」をする。
紗央里母が死臭漂う屋内で「大量の魚を捌いていただけだ」と言えばみんな
あぁ〜魚ね〜
となるし、紗央里ちゃん両親の会話がすごく変であろうと誰も突っ込みません。(夕食に虫を食べているだの、一日中腹筋しなきゃいけないから忙しいだの)
本作で怖いのは、どこまでも他人に無関心な登場人物たちです。
ここで言う他人とは血縁者以外の人間と言う意味ではなく、俺か俺以外の人間かを指します。
【▼おれか、おれ以外か】
要するに自分以外の人間に起こることはすべて他人事のように扱う人たちのことです。それが怖い。
主人公の少年とその家族は何が起きても特に響かない様子だし、唯一まともそうなのは紗央里ちゃんなんですが、本作では彼女の存在が圧倒的マイノリティなため、あたかも彼女以外の人の振る舞いが正解かのような雰囲気にのまれます。
この気持ち悪い雰囲気、お分かりいただけますでしょうか。
殺人と一緒にできないんですが、例えば
ー 痴漢されている人がいてその周囲で気づいている人がいるんだけど、正直自分には関係ないし痴漢に注意して逆上されたら怖いし、なんなら痴漢プレイかもしれないし面倒に巻き込まれるのは嫌なので見て見ぬフリを決め込む ー
とか、
ー 海外のスタバで明らかにアジア人が白人店員に差別的順番飛ばしされているのに周りの人は何も言わず、あまつさえ順番飛ばしされた人の後ろの人は一切興味ないフリをして、ふっつーに店員に自分のラテを注文するー
とか、そう言った道徳的におかしいことが大多数、みたいな感じです。(例えが長い上に分かりにくかったらすいません)
一言で言うと
”とりあえず何にでも無関心、なんなら自分のことでさえも虚無”という人々が、とあるサイコパス一家に関わってしまったけど持ち前のワタシカンケイナイを発動させてコロされることなく家を出られた。しかし事件は解決していない。
っていう胸クソ悪さを前面に押し出したお話でした。
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【▼何度もすいませんが「俺か、俺以外か」です。】
【▼フランスでは茶道、寿司、ローランドのテロップが気になって仕方がない方へ。】