こんにちは。
やっと春らしい気候になってきた・・とウキウキしていたら今日は雪でした。
ミロです。フランスで暮らしてはや12年です。
今年もコロナの影響でステイホームが推奨されていますが、皆さまいかがお過ごしでしょうか。
この記事ではおうちで読書を楽しみたい!という方へ、私がここ最近読んで「怖っ・・。」と思った小説をご紹介していきます。
【目次】
- 第1選 よもつひらさか 今邑彩 著
- 第2選 城の中のイギリス人 アンドレ・ピエール・マンディアルグ 著
- 第3選 羆嵐(くまあらし) 吉村昭 著
- 第4選 残穢(ざんえ) 小野不由美 著
- 第5選 臓物大展覧会 小林泰三 著
- 第6選 家畜人ヤプー 沼正三 著
- 第7選 樽山節考(ならやまぶしこう)深沢七郎 著
第1選 よもつひらさか 今邑彩 著
表題作を含む全12編からなるホラー短編集。
各話テンポがよく、スイスイ読み進められます。若干オチがよめるもののそこに至るまでのプロセスは綿密に練られています。怖すぎずグロすぎず、万人に受け入れられそうな”微ホラー小説”です。
【表題作を雑にご紹介】
現世と黄泉の国とをつなぐ坂、”よもつひらさか ”に差し掛かったある初老の男。気分が悪くなり座っていると、快活そうな若者が介抱してくれた。その若者とともに坂を登り始める。しかし若者が話す奇妙な話に耳を傾けているうちに、だんだん辺りの様子がおかしくなってきて・・。
他にも
- 見知らぬあなた
- ハーフアンドハーフ
など、日常に潜む異常が知らぬ間に眼前に現れる恐怖をさらりとした文体で綴っています。
個人的に雰囲気が好きな一話は「遠い窓」。なんとなく筋肉少女帯の”何処へでも行ける切手”が頭に浮かぶお話です。
【▼人間が怖い系・幽霊系など様々な”怖い”が収められている短編集。お得感あります。】
【▼こちらのホラーアンソロジーにはよもつひらさか 収録の”囁く鏡”が載っています。】
第2選 城の中のイギリス人 アンドレ・ピエール・マンディアルグ 著
1950年代のフランス版変態エログロ小説。
悪食の描写の中にカニや海老などの甲殻類も含まれているんですが、日本人からすると普段の食事風景なのであまりゾッとしないかも。当時のフランス人には甲殻類やタコがおぞましいもののように感じたのでしょうか。
何度も繰り返される”う◯こ”と”ち◯ぽこ”表記にゲンナリしてきますが、ページ数があまりないのが救いです。
2時間ぐらいでササっと重々しくない小説が読みたい方はぜひ!
【▼買うほどではない。図書館で借りて読んだほうがいいかも。】
【▼こちらの記事に詳しくネタバレを載せています。】
第3選 羆嵐(くまあらし) 吉村昭 著
日本最恐の獣害事件”三毛別羆事件”をベースに書き上げられた一作。
ヒグマの脅威を扱った漫画「シャトゥーン」が嘔吐をもよおすほどの怖さだったので、害獣事件についてもっとよく知ろうと手にとったのが本書です。
先に言いますが本書はあまり怖くないです。
改定前のwikipedia三毛別羆事件の方が怖かったかもしれない。この”羆嵐”は全体的にテンポが遅く、さらに完全にキャラ立ちしている熊撃ちの銀さんの登場も遅かったからか。
有名なトラウマシーンとして、妊婦さんが熊にお腹を食い破られる描写がありますが、本書はそこまで細かいグロ表現はないです。文体がドキュメンタリー風なので緊張感はそこそこ保ちつつ読み進められます。
【▼これ本当に怖いし救われない漫画なので、閲覧注意です。】
第4選 残穢(ざんえ) 小野不由美 著
故・竹内結子さん主演で映画化されたホラー小説。
この本を読んだ人のところにも幽霊が来るかもしれないです系の本。
嫌だよね。最後の方で「怪異が伝染する」というメッセージに気づいたけど最初に書いててほしい。
本作は著者が”汚れの地”を調査していくうち明らかになる様々な因果と、それに触れたことによる応報をルポルタージュ調で書き記しています。
最後の方で著者の身に霊障の足音が忍び寄ってきます。
実際はルポルタージュ風創作なので読者に霊障は伝染しません。しかも全ての因果は地獄にあるそうで、そうなるともうどうしようもないよねって思います。
【▼こちらの記事に詳しいネタバレを書いています。】
第5選 臓物大展覧会 小林泰三 著
【!注意!】表題の臓物大展覧会は開催されません。
超絶不気味小説”玩具修理者”で第2回日本ホラー小説大賞短編賞を受賞した、小林泰三によるホラー短編集。プロローグとエピローグを含めた11編が収録されています。
ある人物がストーリーテラー的な立場で臓物が展示してある建物に迷い込み、9つの短編が展開される・・という内容です。
最終的にこの人物はエピローグで自らも臓物の一部になりますが、ちょっと意味がよくわからないまま終了。
個人的には「透明女」が痛そうで嫌だなぁ。
ある女性が自らの意思で自分を切り刻んで、食べて、ボディを透明にしていく・・、という冷たい熱帯魚もビックリの工程で自 死します。それが他人にも及ぶというお話なのですが、食べる云々の前に出血性ショックで心肺停止するのでは。
【▼自分的にはこちらの方が好み。図書館で”姉飼い”とともに借りたら司書のお姉さんに「すごいタイトルですね・・(引き気味)」と言われた思い出。】
【▼ついでに私の「冷たい熱帯魚」レビューを載せておきますね。】
第6選 家畜人ヤプー 沼正三 著
すいません結構前に読んだ本なので記憶が曖昧なんですが、とりあえず
命令主が人間トイレ(?)に「shikko」とか「unnko」とかいうと人間トイレの形状がそれぞれの用足しにふさわしい形状になるー・・・
まで読んで断念しました。
人間トイレというのは人権のない家畜化した人間が、文字通り体の形状をトイレの便器状に改造されたものを指します。ちなみにヤプーとは家畜になった日本人の総称らしいです。
しかもこの本、復刻版が全4巻も出ているんだよね。一巻読破するだけでもしんどいのに4巻て。
【▼ヤプーという愉快な語呂だけでふざけてんのかな?と嫌厭しがちですが、ふざけてないしむしろ大真面目に話が進みます。】
第7選 樽山節考(ならやまぶしこう)深沢七郎 著
日本にかつて存在したと言われる因習、棄老伝説をリアルに書き記した本作。1983年には緒形拳主演で映画化され、カンヌ国際映画祭にてパルム・ドール賞を受賞しました。
深沢七郎の処女作にして、辛口批評作家の政宗白鳥に「人生永遠の書のひとつ」と言わしめた傑作です。他3編収録。
すごく陰惨でおどろおどろしい内容かと覚悟して読み始めたのですが、そんなことはなかった。むしろアットホームな雰囲気さえ感じられる小説でした。
主人公は69歳のおばあさん、おりんなのですが、全然悲壮感がない。めっちゃ元気だし歯も丈夫。むしろその全部揃っている歯が恥ずかしくて、自ら石で歯を砕いたりしますが本作で一番怖かったのはたぶんココです。
あとは、
- 村の食料を盗んでいた雨屋一家がいつの間にか全員行方不明になる
- 姥捨山行きを嫌がっていた隣のおじいさんが、実の息子にこっそり谷底に捨てられる
という薄ら寒い描写もあることにはありますが、一切が無機質というか、他人事のような文体で話が進むのでそこまで残酷な感じがしない。
私的には第一話目の「月のアペニン山」がほんのり怖かった。
ある夫妻が町内に馴染めず引っ越しを繰り返す。夫はなぜ自分たちがつまはじきにされるのか理解できなかったが、ある日自分の妻が精神障害者なのだと気づく。
そこで一切の事象に合点がいき、最終的に夫は妻と離婚するという話。
こう書くと怖さが伝わりませんが、文章にそこはかとなく漂う無機質さ、妻が精神異常と知るや一度も顔を合わせずに離婚手続きを進める夫など、ある種の異常性をまとった作品です。
ということでステイホーム中に読みたい!おすすめホラー小説7選
いかがでしたでしょうか。
霊的な怖さから人間の怖さまで、様々な怖小説の中から皆さまがお気に入りの一冊を発見できることを願っています。
私個人はめっちゃ怖い小説(殺戮に至る病や黒い家的レベルの怖さ)が大好物なので、これなんかめっちゃ怖いよ!というおすすめあれば教えていただけると嬉しいです。
【完】